モニターのスペックに「HDR10」や「DisplayHDR」という文字を目にするようになりました。
「HDRって何なの?」「HDR10?DisplayHDR?違いは?」
こういった疑問について筆者が調べた内容を簡潔に解説していきます。
結論から言えば、HDR10とは映像の規格であり、DisplayHDRはモニター側の規格です。同じHDRという表記ですがそもそも前提が違います。
本記事ではPCモニターのHDR10やDisplayHDRにまつわるポイントや選び方についても簡単に解説していきたいと思います。
HDRってなに?
HDRとは「Hi Dynamic Range(ハイダイナミックレンジ)」の略称です。
HDRは、普通の映像よりも映像の明るさの幅を広げて人間の目で見たような自然な表現を目指した技術です。
ちょっと画像で説明してみますね。



今まで暗くて黒つぶれしてしまっていたところや、明るすぎて白飛びしていた部分をきれいに表現できるようになります。
あくまでイメージですが、このように表現するのがHDRです。
HDR10とDIsplayHDRの違い
HDR対応モニターを探していると、「HDR10」と「DisplayHDR」という文字を目にすると思います。
2つのそれぞれの違いについて説明していきます。
HDR10は映像側の規格
まず、HDR10というのは2015年にCEAが定めたHDRコンテンツに対応するフォーマットの事です。
HDR10は、世界のモニターブランドの多くが広く採用している規格です。Blu-Ray Association、HDMI Forum、UHD Associationが共同で定義したもので、HDR映像コンテンツの圧縮伝送をサポートします。HDR10は、2015年8月27日にCEA(Consumer Electronics Association)によってHDRコンテンツに対応するフォーマットとして正式に定義されました。モニターでHDRの要件を満たすためには、HDR10形式のファイルをデコードできることが重要な要素の一つです。
HDR10とは何ですか? | ベンキュージャパン
HDR10形式のファイルというのは以下「HDR10の要件を満たしている映像ファイル」の事です。
HDR10の要件
- EOTF:2084 SMPTE ST
- カラーサブサンプリング:4:2:0(圧縮ビデオソースの場合)
- ビット深度:10ビット
- 色原色:ITU-R BT.2020
- メタデータ:SMPTE ST2086、MaxFALL、MaxCLL
要するにHDR10対応モニターというのは「HDR10形式の映像を出力できるモニター」ということ。HDRの映像を表示できるというだけで、「記録された映像を正確に出力できます!」という保証があるわけではないのです。
Display HDRはHDRモニターの性能を表している
HDR対応モニターの性能が消費者にはわかりにくい状況から、モニター業界で定められたのが「Display HDR」です。
DisplayHDR は、HDR の品質とパフォーマンスのオープン スタンダードであり、すべての仕様を満たすディスプレイのみが DisplayHDR ロゴを表示できます。
VESA 認定 DisplayHDR™
DisplayHDRは認定要件を満たすモニターのみにつけられており、主に以下5つの要件でティアを振り分けています。
- 最小ピーク輝度
- 色域
- 調光技術
- 最大黒レベル輝度
- 最大バックライト調整待ち時間
そして今現在のDisplayHDR規格のティアは下表のように分けられています。
DisplayHDR規格 | 最小 ピーク輝度 | 色の範囲 | 典型的な 調光 技術 | 最大 黒レベル 輝度 | 最大 バックライト調整 待ち時間 |
---|---|---|---|---|---|
DisplayHDR 400 | 400 | sRGB | 画面レベル | 0.4 | 8 |
DisplayHDR 500 | 500 | WCG | ゾーンレベル | 0.1 | 8 |
DisplayHDR 600 | 600 | WCG | ゾーンレベル | 0.1 | 8 |
DisplayHDR 1000 | 1000 | WCG | ゾーンレベル | 0.05 | 8 |
DisplayHDR 1400 | 1400 | WCG | ゾーンレベル | 0.02 | 8 |
DisplayHDR400 トゥルーブラック | 400 | WCG | ピクセルレベル | 0.0005 | 2 |
DisplayHDR500 トゥルーブラック | 500 | WCG | ピクセルレベル | 0.0005 | 2 |
主に、この5項目をどれだけ満たしているかでDisplayHDR〇〇の〇〇の数字部分が変わってきます。
前述のHDR10という表記だけでは大部分の人がモニターの性能はわからないと思いますが、DisplayHDR〇〇を見ればモニターのHDR性能が一目瞭然になり消費者にとってはありがたい規格、というわけです。
DisplayHDR400とHDR10の違いは?
HDR10のみ表記されたモニターはDisplayHDR400モニターよりも劣っている。と言い切りたいのですが、「DisplayHDR400モニター」と「HDR10対応のみ表記されたモニター」では、要件の1つである「最小ピーク輝度」はほぼ同じなことが多いです。
そのため気にしなくてもいいと言えますし、性能が保証されているDisplayHDR400のほうが安心感があるとも言えます。
気になる方はモニターのピーク輝度がカタログや取説などに表記されているはずなので調べてから購入するといいでしょう。

HDRモニターの選び方:できればDisplayHDR600以上の製品を選ぼう
HDRを目的としているならDisplayHDR600以上の製品がおすすめです。なぜかと言えばDisplayHDR400はスタンダードな従来のモニターと見え方はたいして変わらないからです。
DisplayHDR規格 | 最小ピーク輝度 | バックライト制御レベル |
---|---|---|
DisplayHDR400 | 400cd/m2 | 画面レベル |
DisplayHDR600 | 600cd/m2 | ゾーンレベル |
DisplayHDR1000 | 1000cd/m2 | ゾーンレベル |
DisplayHDR400の場合、画面全体で均一にバックライトを制御しHDRを表現しようとしているのに対し、DispayHDR600や1000は画面を区切ってスポット的にバックライトを制御しています。
- ピーク輝度がどれだけ出ているか(HDRを表現するにはとにかく画面の輝度が必要)
- モニターの黒表示部分はどこまで黒くできるのか(バックライトを段階的、局所的に制御して黒い所を黒くする)
HDRでは特に重要なのが上記の要件なので、バックライトの輝度と制御が緻密になればなるほど黒つぶれや白飛びの無い映像表現が可能になるということです。
どうしても価格が高くなってしまいますが、HDRが目的でモニターを購入するならDisplayHDR600以上のモニターを選ぶことをおすすめします。

まとめ:HDR10とDisplayHDRは全然違う
本記事では、そもそもHDRとは何か。HDR10とDisplayHDRの違いやHDRモニターの選び方を解説しました。
記事の内容をまとめると
- HDRは映像の黒つぶれや白飛びを少なくする技術。
- DisplayHDRはモニターのHDR性能を示している。
- HDR10は映像側の規格。モニターがHDR10の映像に対応していることを示すしている。
- DisplayHDRはピーク輝度やバックライト制御が今までのモニターとは違う。
- より良いHDR体験をしたいなら、DisplayHDRは600以上から選ぶのが吉。
といった感じでDisplayHDRはモニターの性能を表した規格であり、数字が大きいほど人間の目で見たようなきれいな映像を表現できるということになります。
もしHDRモニターを購入するのであれば、DisplayHDR600以上の製品をぜひ選んでみてはいかがでしょうか。
本記事がモニター選びの参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。




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